vol.4 「WEBと顧客体験」

最高の顧客体験を生み出すには?5人のエキスパートに聞く、戦略とデザイン

デジタルマーケティングやWebデザインの本質的なテーマについてゲストスピーカーを招き、参加者と一緒に考えていくloftwork Webmaster Camp。2016年最初となる今回のテーマは「Webと顧客体験」です。

ファーストセッションでは、株式会社資生堂 コーポレートコミュニケーション本部の木村桃子氏とコクヨ株式会社 ファニチャー事業部の城間健市郎氏が登壇。それぞれの自社サイトの目的と役割から、ユーザー像の捉え方、実践している戦略と戦術についてお話しいただきました。

セカンドセッションは、企業とユーザーをつなぐWebの「顔」とも言えるインターフェースデザインに注目。株式会社グッドパッチの村越悟氏とFULLER株式会社のキム・ヨンビン氏、そしてロフトワークプロデューサー濱田真一の3名と、デザインを通じた顧客体験について考えました。 


いい顧客体験を生み出すためのオウンドメディア戦略の秘訣とは?

最初に登壇したのは、資生堂グループ全体の事業情報から採用情報、企業広告に至るまで幅広く資生堂のWeb展開を担当する木村桃子氏。資生堂の考えるオウンドメディア戦略についてお話しいただきました。

株式会社資生堂 コーポレートコミュニケーション本部 コミュニケーショングループ 木村桃子氏

株式会社資生堂 コーポレートコミュニケーション本部 コミュニケーショングループ 木村桃子氏

「資生堂は、自社の強みを活かした生活者にとって共感する/役立つコンテンツを発信し、オウンドメディア上での接点を生んでいます。より多くの生活者にコンテンツに触れてもらうことでデジタル上でのコミュニケーション総量を最大化。資生堂に対するロイヤリティの向上に繋がることを期待しています」

氏の担当する「企業情報サイト」には明確な目的を持ってきているユーザーが多いため、まずはユーザーの求める情報を早く正確に伝えることを重視し、その上で、自分たちが伝えたい情報を届ける工夫をしています。

木村氏の考える企業情報サイトの役割は、大きく2つ。

1. 情報を求めている人に迅速に伝えること
2. 次に、こちらが伝えたいことを伝えること

もともと資生堂に対する信頼度が高い顧客にとっては、自分が知らなかった情報を得られることが「いい体験」であり、一般的な顧客にとっては、自分がほしい情報がすぐに手に入ったときが「いい体験」であると捉え、設計しているようです。

関連リンク
資生堂グループ企業情報サイト
 


続いて登壇したのはコクヨの城間健市郎氏。コクヨの教育事業部は「能動的な学習環境の構築」をテーマに、幼稚園、小学校から大学まで、すべてのカテゴリーに対して学習空間の提供をしています。学校・教育関係者という特徴的なターゲットと向き合い、どのようにWebサイトのリニューアル・運営に取り組んでいるかご紹介いただきました。

コクヨ株式会社 ファニチャー事業部 提案マーケティング部 城間健市郎氏

コクヨ株式会社 ファニチャー事業部 提案マーケティング部 城間健市郎氏

今回取り上げたのは教育事業サイトのリニューアルプロジェクトの事例。リニューアルに関わったのは、教育事業部のメンバーと、城間氏、そして、ロフトワークの三者です。城間氏は、ユーザー目線でWebサイトをつくっていきたいと考える教育事業部のメンバーとWeb制作のプロであるロフトワークの間に入り、Webマスター業務だけでなくそれぞれの考えの翻訳をするという立場で入りました。三者連携体制こそがプロジェクト成功の秘訣だった、と城間氏は振り返ります。

「特に大切だなと思ったのは、制作の手前で行ったワークショップです。顧客体験、ターゲットをどのようなものにするか、という議論を教育事業部のマーケティングメンバーだけでなく、部長や営業部、設計のメンバーにも入ってもらい、時間をかけて、最適解を見つけていきました。特に、事業部長にも参加してもらえたことがよかったと思います」

上長が最初の段階からプロジェクトに加わることで、事業部全体を見ている上の視点のアウトプットを入れられるという点に加え、その後の稟議や決裁がしやすくなるという利点もあり、とてもスムーズにプロジェクトが進んだといいます。

関連リンク
教育施設向け空間提案 | コクヨ
コクヨ株式会社 教育機関向け製品サイトリニューアル | 実績・事例 | 株式会社ロフトワーク
 


顧客体験におけるUIデザインの重要性

セカンドセッションの最初に登壇したのはグッドパッチ取締役の村越悟氏。グッドパッチは、「デザインの力を証明する」というミッションでパートナーのデザイン世界を日々前進させています。プレゼンテーションのテーマは、「よりよいプロダクトづくりのためのデザインプロセス」。プレゼンの中では、「顧客体験におけるUIデザインとは?」と「顧客体験をデザインする上で必要な要素とは何か?」という二つの問いを立ててお話しいただきました。

株式会社グッドパッチ デザインDiv. 取締役 ゼネラルマネージャー 村越悟氏

株式会社グッドパッチ デザインDiv. 取締役 ゼネラルマネージャー 村越悟氏

まずは、「顧客体験におけるUIデザインとは?」。クライアントからの「UIを変えたい」という相談に対して単純にUIのみを改善しても結果として本質的な課題解決にはならないことが多い、と村越氏は言います。実際、UIの裏側にあるオペレーションやサービスの設計に課題が潜んでいることが多く、一般にUIといっても、サービスとユーザーインターフェースの両輪で考える必要があるというわけです。

「UIを考える中で必ず立てる問いは、『エンドユーザーもサービス提供側もちゃんと見合ったサービスを提供できるのか』という問いです。その両輪を捉えた上で、最適解を掲示していくことを重視しています」

一方「顧客体験をデザインする上で必要な要素とは?」という問いに対しては、4つの条件とその関係性を提示しました。まずは「メンバーのコミュニケーション量が多いこと」。「メンバーの熱量」が上がると「お互いの信頼関係」が築け、結果として「プロダクトやプロジェクトの品質が上がっていく」。4つの要素が互いに作用し循環することでいい顧客体験をつくることができる、と結論づけました。


セカンドセッション2人目の登壇者はFULLER株式会社のキム・ヨンビン氏です。もともとデザイン専攻ではなく、日本語教師になろうと思っていたキム氏ですが、現在は日本デザイン学会やred dot awardの賞を受賞し、デザイナーとして活躍しています。自身のバックグラウンドを振り返りながら「非デザイン専攻者のデザインプロセス」を解説いただきました。

FULLER株式会社 デザイナー キム・ヨンビン氏

FULLER株式会社 デザイナー キム・ヨンビン氏

 キム氏が重要視したのは、表面的な「デザイン」ではなく、「デザイン」の背景にある「マインドセット」や「デザイン思考」。ブランドデザイン、プロセスデザイン、レイアウトデザイン、デザインにおけるシンプルさと複雑さの関係についてなど、いくつかの観点から事例を挙げて解説しました。

セッションの最後には、優れたデザイナーの思考や行動について6つの原則を共有しました。

1. デザインをしようとするより問題を解決しようとする。
2. 図より考えが先ということを意識している。
3. 常に完璧にすることはできないことをよく知っている。
4. ディテールにこだわる。
5. 自分の製品を他人に販売(広報)することができる。
6. トレンドをあきらめることができる。


株式会社ロフトワーク マーケティングDiv. プロデューサー 濱田真一

株式会社ロフトワーク マーケティングDiv. プロデューサー 濱田真一

最後に、ロフトワークのプロデューサー濱田真一が「モバイルサイトのローカルナビゲーション」をテーマに登壇。WebサイトのUIを語る上で重要な要素のひとつとしてグローバルナビゲーションがありますが、「もっとローカルナビゲーションに注意を払う必要がある」と濱田は問題提起します。ローカルナビゲーションはグローバルナビゲーションと同様に目次としての役割も果たす一方で、ユーザーの目的達成に対してより直接的な役割を果たすことが多い、と濱田は指摘。「サイトのシングルカラム化やモバイル端末からのアクセス増加により、ローカルナビゲーションのUI設計も多様化している」と分析しました。

濱田は、PCとモバイルで配置を変える事例や、モバイルサイトで多く見られる表示のバリエーションを紹介。目的や機能に応じて大きく変わるサブナビゲーション設計の重要性を強調し、ディレクターなど専門家とともにデザインすることを提案して締めくくりました。

会場には、この1年間アドバイザーとしてイベントに携わっていただいた本間充氏の姿も。参加者にエールを投げかけるとともに、「2016年もネットワークや情報交換の機会としてこの場を活用していけたら」とコメントを頂きました。ネットワーキングでは、参加者同士の交流が盛んに行われる中、有志によるライトニングトークも実施。日々の業務を通じて得られた気付きをアウトプットする機会となりました。

今後もloftwork Webmaster Campでは、Webに携わる方々が日頃課題に感じるトピックをさまざまな切り口から一緒に考えていけるイベントを開催していく予定です。今後の展開にもぜひご期待ください。

関連リンク
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