vol.2 「WEBマスターの哲学」

Webに携わるすべての人がアイデアや学びを共有できるサロン型イベント「Webmaster Camp」。第2回は、第1回のテーマ「2015年のWebトレンド」から趣向を変え、哲学的観点からWebマスターの働き方、仕事の楽しみ方を模索。個性的なスピーカー陣と共に、答えがありそうでなさそうなこのテーマと真剣に向き合いました。

カジュアルな場所でリラックスしながら、ざっくばらんに仕事の悩みを話し合える場を作ろうと始まったこの企画。オープニングでロフトワークの渡部晋也は、「前回のセッションで、チームづくりがいい仕事のカギを握るという話があった。Webマスターは一人で仕事をしがちで、誰かと手を組むことがなかなかできていない。本日のスピーカー陣から、仕事に臨むときの姿勢や考え方を学びたい」と挨拶しました。


イベント企画者のロフトワーク マーケティング 渡部 晋也

イベント企画者のロフトワーク マーケティング 渡部 晋也


Session1 マインドセット “自分はどうありたい?自分にしかできないことは?

3つのテーマでくくられた今回のセッション。1つ目のテーマ「マインドセット」について語ったのは、清水誠氏と株式会社ブルームコンセントの小山龍介氏のお二人です。はじめに清水氏が、「大事なことはデジタルキッズから学んだ」として、我が子の15年の歩みを紹介。

清水誠氏

清水誠氏

3歳でケータイメール、6歳で3Dネトゲデビュー、10歳でWikiサイト更新、中1で新言語Scalaの最年少コミッターと、次々飛び出すエピソードに会場が目を丸くする中、「我が子が天才なのではない。子どもは誰でもスゴイ。親は“どうせ子どもだから”と見ていないだけ」と一言。

子どもに学ぶべき点

・変化に気づき、本質を見抜く
・失敗を恐れず挑戦する
・しつこく繰り返し、引き際は鮮やか
・先入観や習慣に囚われない

さらに、「子育てとマネジメントは同じだと気づいた」と清水氏。Webマスターに必要なマネジメントのポイントをまとめました。

・期待や常識を押しつけない
・自分で考え、行動できるように見守る
・軽く背中を押し、足を引っ張らない
・環境を作る
・変化や可能性に気づく

「諦めずに、いかに進み続けさせるか。べき論や一般論は関係ない。自分はどうありたいか?を明確にすることが大事。哲学というよりも美学」と清水氏はまとめました。

続いて小山氏が登壇。哲学科出身者らしく、『仕事の哲学』の著者ピーター・F・ドラッカーの言葉を引用しつつ、Webマスターの存在論に迫りました。

ブルームコンセプト 代表取締役 共同経営責任者 小山 龍介氏

ブルームコンセプト 代表取締役 共同経営責任者 小山 龍介氏

●行うべきことを行う
 一人ひとり存在意義は違う。自分にしかできないことをやる。
●優先すべきことを決める
 自分のやりたいこととは別に、会社の中で求められていることを考え優先する。
●自らの強みを活かす
 とはいえ最終的には自分の強みを活かすことが大事。
●何にもっとも貢献できるかを考える
 どこで貢献できるかを知っておくと、「企業の居場所・私の居場所」ができる。Webマスターは企業の居場所を創り出す人。

「自分が会社に、会社が社会に何を与えられるのか?を考える。与えれば、(居場所が)与えられる」と小山氏。最後に内村鑑三の言葉「後世に残せる最大の遺物は、勇ましい高尚なる生涯」を紹介。これは、ドラッカーの「才能がなくてもいい」につながるとして、「勇ましい高尚なるWebマスターへ!」とエールを送りました。


Session2 チーム “ホントにその仕事・そのプロセスは必要ですか?

「“個”がスキルアップし、全員が成長することでチームが強くなる。業務を割り当てるときは、自分の仕事が会社の業績にどうつながるかをイメージできるようにする」と語るのは、株式会社リコーの伊藤恵美子氏。6名のチームリーダーとして、働き方、評価プロセスの2つの観点から、メンバーの育成ノウハウを紹介しました。

株式会社リコー コーポレート統括本部 コーポレートコミュニケーションセンター 戦略・統括室 シニアスペシャリスト Webmaster 伊藤 恵美子氏

株式会社リコー コーポレート統括本部 コーポレートコミュニケーションセンター 戦略・統括室 シニアスペシャリスト Webmaster 伊藤 恵美子氏

 守備範囲を広げる働き方

業務分担を決める際のポイントは次のとおり。

●得意・不得意分野を混在させる
 得意分野を伸ばせるような業務分担をしつつ、敢えて不得意な領域の仕事にも関わらせる。
●キャリアパスを考慮する
 本人の進みたい方向に近づけるような経験をさせる。
●属人的な仕事を作らない
 慣れている人と慣れていない人を組み合わせて担当させる。

さらに伊藤氏は、達成プロセスの評価にも言及し、「年2回の目標面談で成果達成度と達成プロセスを評価しています。達成度100%でもプロセスが望ましくないと評価は下がることもあります。」とチームで仕事をする上での独特の評価も紹介しました。最後に「ホントにその仕事・そのプロセスは必要なのかを1回考えてみる」と自らの信念を紹介。その上で、「あえて面倒な方法を選ぶ勇気も必要」と強調。それが、個の成長、チームの成長につながるからです。とセッションを締めくくりました。


Workshop “あなたの仕事の哲学は何ですか?

セッションの合間には、全員で自分の仕事の哲学について考えるワークショップも行われました。ファシリテーターを務めたロフトワークの柳川雄飛は、「Webマスターは案外孤独な仕事。他のWebマスターは何を考えているのか?スキルや課題を共有・共感し合う中で、自分のスキルアップにつなげるだけでなく、Webマスター同士がつながる良い機会になれば」と挨拶。

ロフトワーク プロデューサー 柳川 雄飛

ロフトワーク プロデューサー 柳川 雄飛

ワークでは、普段の仕事で抱える個人的な悩みや課題を発掘することから始め、同じような悩みや課題を抱える人とチームを組んで課題解決のアプローチを考えていきました。ワークの最後には、グループ内のディスカッションから見えてきた自分なりの仕事の哲学を1センテンスで表現。組織や業界を超えた他人のフィルターを通して、一人ひとりが改めて自分の仕事と向き合い、「Webマスターに必要な要素は○○である」の「○○」を発見したようです。

仕事の哲学を見つけるワークショップ

仕事の哲学を見つけるワークショップ


Session3 メソッド “自分が顧客だったら・・・を考え、最初のドミノになろう

「金曜午後。このあと直帰ですよね?もう少しです!」と会場の笑いを誘ったビッグローブ株式会社の瀬川友輔氏。ロフトワークと手がけたAndroidホームアプリ「WidgetHome」開発プロジェクトを担当したシニアディレクターの重松と「とにかく楽しかった」と振り返りつつ、「本当はものづくりが好き。人の役に立ちたい、フルコミットで仕事がしたいのに、なかなか全てに全力投球は難しい。あのときと何が違うのか?」と自問からセッションをスタート。

ビッグローブ株式会社 クラウド・スマートサービス事業部 VASビジネスグループ 主任 瀬川 友輔氏

ビッグローブ株式会社 クラウド・スマートサービス事業部 VASビジネスグループ 主任 瀬川 友輔氏

一番の違いは「自分が顧客ではないこと」。「自分が最初のドミノにならなければならない。みんなはこういうものが欲しいはず!ではなく、自分が心から使いたいプロダクトを真剣に考えることに時間をかけるべき。それをしたのがWidgetHomeだった」と瀬川氏。

目指したのは「納品」がゴールにならないことです。納得できるまでプロダクトについて考え、過剰なほどに妥協のないペーパープロトタイプやデザインブリーフィングが最高のパッションにつながっていったと言います。「顧客自身、何が欲しいかわからずに発注しているのだから、流行ではなく“自分が顧客だったら”の真理を追いかけること。間違ったら変えればいい。最初のドミノになる人が複数いれば、その時間も楽しい」。瀬川氏の言葉には実感が込められていました。

関連リンク
[事例] Androidホームアプリ「WidgetHome」制作


Sponsor Session CMS選定ポイントは、CMSの哲学と実運用のズレをなくすこと

株式会社のれんの八木康介氏は、「CMS導入企業の約65%が乗り換えを検討している。いかに自社運営に合わない製品を選んでいるかということ」と指摘。さらに、「各CMS製品には“想定している使い方”=各CMSの哲学がある。大事なのは機能の多さではない。哲学と実運用のズレをなくすこと」だとして、CMS選定の4つのポイントを自社の事例を交えながら解説しました。

株式会社のれん 技術推進部 NORENエバンジェリスト 八木 康介氏

株式会社のれん 技術推進部 NORENエバンジェリスト 八木 康介氏

●CMS選定のポイント

1)静的or動的
静的CMSで対応できるのか?本当に動的CMSが必要なのかを見極める。
2)管理対象
管理対象がコンテンツなのかファイルなのか、あるいは両方なのかを考える。
3)運用体制
主に、中央集約型、分散型、半自動化型、パートナー協力型の4つの運用パターンがあり、それぞれ必要な機能が違う。運用フローに合ったCMSなのかを見極める
4)Webマスター支援
CMSの哲学を理解するためには、より充実したサポートやコミュニティ、パートナーの質が重要な要素になる。

関連リンク
CMS のれん


Panel Discussion 仕事の価値を理解し、世の中に対して自分の居場所を作る

セミナーの最後は、個性あふれるお二人によるパネルディスカッション。ロフトワークの君塚美香をモデレーターに、Web担当者Forum編集長 安田英久氏とWeb Professional編集長 中野克平氏が、参加者の関心に応える形で持論を展開しました。その一部をご紹介します。

モデレーター ロフトワーク君塚美香(左)Web Professional 中野克平氏(中)Web担当者Forum編集長 安田 英久氏(右)

モデレーター ロフトワーク君塚美香(左)Web Professional 中野克平氏(中)Web担当者Forum編集長 安田 英久氏(右)

Q:人をどう育てている?

安田:「心」で育てる。細かい作業を教えるのではなく、自分は何のためにこの仕事をしているのか、この作業は全体の中でどんな意味を持つのか、世の中に対してどんな価値をもたらすのかをしっかり理解し、哲学を持って仕事に臨ませる。

中野:利益は息をするのと同じで、出して当たり前。利益のために仕事をするな!世の中に対して自分の居場所を作れ!と言っている。

Q:企画が通らない、予算がもらえない、Webが理解されない理由は?

安田:PVだUUだと言っても経営者は興味がない。相手がどんなタイプの人間かを把握し、その人間の願望やニーズを把握した上でコミュニケーションすることが大事。

中野:上司とコピー機は使いよう。何もやってくれないと嘆く前に、自分が使いこなしていないんだと思うべき。

Q:Webマスターにひとこと

安田:自分が何をして生活費を稼いでいるのかを、親、兄弟、子どもに説明できるか。自分の部署の給料がどこから生まれているのかを、部下に全部説明できるか。それができないなら、できるようにしましょう。そしてもう一つ。今日聞いた話は一年後には変わっている。だから仲間を作ること。たとえばこのWebmaster Campのようなイベントで出会った仲間との関係を大切にし、できれば、Web広告研究会や企業研究会、a2iなどの業界団体にも参加していくといいだろう。

中野:社内だけでなく社外にも仲間を作ったほうがいい。特に社外の仲間こそ大事。なぜなら仕事を持ってきてくれるから。業者としてではなく、仕事を一緒に提案できる人や会社と出会えると仕事が最高に楽しくなるし、社内外に味方がいればコワイものはない。

参加者からの問に答える形で積極的な議論が展開

参加者からの問に答える形で積極的な議論が展開

全てのプログラムを終え、最後はロフトワークの矢橋友宏がクロージングトークを展開。最近読んだという書籍『どうしてあの人はクリエイティブなのか』を紹介し、書籍の内容を引用しながら、「ひらめきは偶然ではない。天才と呼ばれる人も、想像以上に努力していたり、発想するために人一倍インプットしていたりする」と矢橋。

ロフトワーク 取締役 兼 CMO 矢橋 友宏

ロフトワーク 取締役 兼 CMO 矢橋 友宏

さらに「Webも同じ。徹底的にWebのことを考えにいくと、Webしか見えなくなってくる。一歩引いて視野を広げると、Webのあり方が見えてくる。本イベントのような機会を積極的に利用し、様々な知見から視野を広げて業務に活かしてほしい」と語り、締めくくりました。

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